呉で南極観測船(砕氷艦)”しらせ”(AGB-5003)

9月4日、南極観測船(砕氷艦)"しらせ"(AGB-5003)が呉基地に入港しました。現在"しらせ"は総合訓練中です。先月末に横須賀基地を出港し、呉に寄港しました。7日に出港し、佐世保、舞鶴、八戸、仙台に立ち寄り10月に横須賀に帰港予定となっています。

南極観測船(砕氷艦)しらせ (AGB-5003)

今回は一般公開なし

これまで"しらせ"の入港時には一般公開されていたのですが、今回はCOVID-19の感染拡大防止のために一般公開されません。呉出港後の舞鶴や八戸では実施されるようです(事前申込要。すでに締切済)。ちなみに私、2007年に先代の"しらせ"(AGB-5002)の一般公開に出かけたことがあります。もう13年も前のことになるのですね。

“しらせ" と “とわだ"

現在の"しらせ"は2009(平成21)年に就役しました。当初計画では先代の"しらせ"よりも大きな20,000トン型が計画されていましたが、財政事情から先代を若干上回る排水量12,800トン(先代:11,600トン)になり、船体寸法や機関出力などは先代とほぼ同様となっています。

先代"しらせ"との違い

先代の"しらせ"(AGB-5002)との違いを記してみましょう。もっとも、カンタンなことしか記せないので、専門的なことはもっとちゃんとしたサイトで知識を得てください(笑)。

とりあえずそれぞれの写真を。先代の"しらせ"がずんぐりむっくりして見えるのは、使っているレンズのせい。実物は上に記したように船体寸法に大きな差はありません。

2代目"しらせ"(AGB-5003)
先代の"しらせ"(AGB-5002)

間違い探しのようですが、ぱっと見で違うのは艦橋後ろにある煙突の数。先代"しらせ"は1本でしたが、現行"しらせ"は2本が並列に配置されています。

そして艦首を見ると、現行"しらせ"には先代"しらせ"にはない穴がいくつかあります。これは散水装置。これにより砕氷効率を高めています。

あと、写真ではわかりませんが、搭載する2機のヘリコプターが先代のそれよりも輸送能力の高いもの(CH-101)に変わっています。輸送というところでは、物資の定型化・コンテナ化をすすめ、より効率的に輸送できるようにしています。

“しらせ" と “ちはや"

また、"しらせ"は環境へ配慮された艦となっています。具体的には、発電用ディーゼルは大気汚染防止に配慮した機種を選定、廃水処理システム・廃棄物処理システムの装備、船殻にはじめてステンレス・クラッド鋼板を採用することで船体塗料による海洋汚染の減少および外来種輸送の防止など、多くの環境汚染対策が実施されています。

見た目にはそれほど変わっていない"しらせ"ですが、その中身は先代の良いところを継承しつつ、運用経験からの改善を実施し、加えて今(就役時)にできる環境対策技術が導入されています。見た目は変わらなくとも、大きく進化していると言えるのではないでしょうか。

“しらせ"の任務は南極基地への隊員と物資の輸送と海洋でのさまざまな観測を行うこと。派手な任務ではありませんが、必要であり、"しらせ"でないと任務を遂行することはできません。そんな"しらせ"が大きな事故することなく、任務を遂行し続けることを願うばかりです。

参考にした書籍など

  • 世界の艦船 2009年7月号(海人社)"新砕氷艦「しらせ」のハードウェア"
  • 海上自衛隊 2017-2018 世界の艦船 2017年7月号増刊 (海人社)