安芸の国から

安芸の国に暮らすおじさんのお出かけ記録です

旧帝国海軍:鯛乃宮神社の第六潜水艇殉難者之碑

12月14日に呉の鯛乃宮神社にある第六潜水艇殉難者之碑を訪れました。以前から気になっていたのですが、やっと訪問したのでした。

第六潜水艇とは?

第六潜水艇とはホランド改型(第6型)の潜水艇(大正8年4月1日付で潜水艦に)です。同型に第七潜水艇が存在しました。日本ではじめて詳細設計からはじめれた潜水艇で明治39年に完成しました。しかし、それまでに外国から手にした「ホランド型」よりも全体的に性能面で劣っていたそうです。下の画像は昨年、大和ミュージアムで開催された企画展「呉と潜水艦」で紹介されていたものです。

第六潜水艇の画像

上に記したように性能的に劣っているために「どん亀」と呼ばれていた第六潜水艇は明治43年4月15日に山口県岩国新湊沖でのガソリン潜航訓練中に遭難沈没し、艇長の佐久間大尉以下乗組員14名のすべてが殉職してしまいました。沈没後は引き上げられ修理をされた後に現役に復帰しましたが、第七潜水艇とともに大正9年12月1日に除籍されました。

そんな第六潜水艇ですが、どうして殉難者之碑が建てられたのでしょう?

鯛乃宮神社の鳥居

第六潜水艇殉難者之碑がある鯛乃宮神社入口

ここが第六潜水艇殉難者之碑がある鯛乃宮神社の入口です。鳥居の右側に看板があるのがわかります。ここには第六潜水艇の説明や毎年4月15日に慰霊・追悼式典が催されることが記されています。

ちなみにこの鯛乃宮神社ですが、近くに駐車場がありません(ホントはあるのかもしれませんが見つけられませんでした)。そのため、結構離れた駐車場から歩くことに・・・ いちおう気にしておいたほうがいいかもしれません。

第六潜水艇殉難者之碑

第六潜水艇の画像

鯛乃宮神社の鳥居をくぐり、階段をのぼると第六潜水艇殉難者之碑があります。

さて、最初に書きましたがどうして第六潜水艇殉難者之碑が建てられたのでしょう? それは何よりも佐久間艇長をはじめとする乗組員が最期まで自分の持ち場を守っていたこと(持ち場を離れていた乗組員は破損したガソリンパイプの修理をしていた)、そして佐久間艇長が死の直前まで遺書として事故を起こしてしまったことへの謝罪、事故の原因、潜水艦発展の願い、また乗組員の遺族に対しての配慮することを願っていることを書いていたことが国民に哀悼の意を感じさせたからでしょう。また、佐久間艇長の沈着冷静な行動は「沈勇」として称賛され、修身の教科書や軍歌として広く取り上げられたそうです。

ちなみに、第六潜水艇の前に同様の事故がイタリア海軍で起こったときには乗組員が我先に脱出しようと殴りあった末にハッチ前で死んでいたそうです。こういったこともあり、第六潜水艇の事故の様子は日本のみならず海外にも大きな感銘を与えたのでした。

碑銘銅板と佐久間艇長の遺書

第六潜水艇殉難者之碑には4枚の碑銘銅板があります。下はそのうちの2枚で佐久間艇長と第六潜水艇を描いたものと佐久間艇長遺言です。残りの2枚は第六潜水艇乗組員名簿と第六潜水艇顕彰保存会の書です。

鯛乃宮神社の第六潜水艇殉難者之碑
鯛乃宮神社の第六潜水艇殉難者之碑

画像ではちょっと読みづらいと思いますので、書かれている遺書を記しておきます。

佐久間艇長遺言

小官ノ不注意ニヨリ陛下ノ艇ヲ沈メ部下ヲ殺ス 誠ニ申訳無シ サレド艇員一同死ニ至ルマデ皆ヨクソノ職ヲ守リ沈着ニ事ヲ処セリ 我レ等ハ国家ノ為メ職ニ斃レシト雖モ唯々遺憾トスル所ハ天下ノ士ハ之ヲ誤リ 以テ将来潜水艇ノ発展ニ打撃ヲ与フルニ至ラザルヤヲ憂ウルニアリ 希クハ諸君益々勉励以テ此ノ誤解ナク将来潜水艇ノ発展研究ニ全力ヲ尽クサレン事ヲ サスレバ我レ等一モ遺憾トスル所ナシ(中略)

公遺書

謹ンデ陛下ニ白ス 我部下ノ遺族ヲシテ窮スルモノ無カラシメ給ハラン事ヲ 我念頭ニ懸ルモノ之レアルノミ(後略)

右十一時四十五分司令塔ノ明リニテ記ス

中略には沈没した原因と沈没した後の状況が記されています。後略には「左ノ諸君ニ宜敷」と関係する方々が、その後に「十二時三十分呼吸非常ニクルシイ 瓦素林ヲブローアウトセシ積リナレドモ ガソリンニヨウタ」と書かれています。

この佐久間艇長の遺書から回天の黒木大尉の遺書を思い出す方もいらっしゃるのではないかと思います。それも当然で、黒木大尉は佐久間艇長の死にざまを崇拝していたそうです。「死ぬときは佐久間艇長のようにありたい」とも話していたようで、回天で沈没したときに佐久間艇長のことを考えたことは間違いありません。そういった意思が黒木大尉に事故発生時およびその後の状況などを記した遺書を書かせたのでしょう。

それにしても、自分がそんな状況になったときに沈着冷静に行動できるのだろうか・・・ 正直なところ、きっとできないだろうなと考えてしまいます。でもいい年になってしまったおじさんとして、何かの時には恥ずかしくない行動をしたいものと改めて感じました。

参考にした書籍

このページの公開日:2008.12.21

コンテンツメモ

  • 訪問日:2008.12.14
  • 場所:広島県呉市
  • 行程:国道2号 - 国道31号
  • EOS 40D + EF-S10-22 F3.5-4.5 USM

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