10月22日から30日に「旧軍港市 日本遺産WEEK」が開催されました。今年4月に旧軍港四市(横須賀, 舞鶴, 呉, 佐世保)が近代化を目指したストーリーが日本遺産に認定。その認定を記念して開催されたイベントです。各市では普段公開されていない構成文化財が公開されていたりパネル展示やキーワードラリーが行なわれていたり... 一般公開されていた施設のひとつ「本庄水源地」を観にでかけました。
私が本庄水源地に出かけるのは、8年前の2008年に桜の時期の一般公開で出かけて以来。そのときにも記していますが、日本遺産に認定されたということで(?)、今回はより詳細に記したいと思います。
呉の水道は明治22年に呉鎮守府が開庁されるのにあわせ海軍が創設した「呉鎮守府水道」がはじまりです。「本庄水源地」は海軍施設の拡張により増加した用水需要を満たすために、やはり海軍が大正元年に着工同7年完成と長い月日をかけて築造された水道です。「呉鎮守府水道」「本庄水源地」ともに海軍専用でしたが、大正7年4月にこの本庄水源地からの分水を水源として市民への給水が開始されました。
この「本庄水源地」の築造にはいくつかの案が考えられました。公文備考の呉鎮2822号(明治42年12月2日)に4つの案が記されています。
しかし比較的優良と認めていた第4案においても難工事となるために更に調査の結果、第5案が考えられました。公文備考の呉鎮2458号(明治43年11月30日)に見つけることができます。
二河川上流の焼山村に堰堤を築き、焼山村と本庄村に水量170万トンを貯えるものです。第4案同様にろ過装置を省略し、生水をそのまま工業用に供給することで、第4案よりも給水量を増加しています。
当時の海軍が持つ土木技術を結集して築造された「本庄水源地」は、今も水道施設として呉市民に水を供給しています。その点が高い評価を受け、1999(平成11)年に「国の重要文化財」に指定されました。
国の重要文化財に指定されている本庄水源地の各施設を紹介します。
堰堤と階段。堰堤は重力式コンクリート造りのもの。外観は花崗岩が用いられていてとても重厚、そして美しいものとなっています。階段は石造りで長さ36.5m、この写真ではわかりにくいのですが、かなり急なものです(^^;。
階段をのぼって堰堤を上から。この堰堤は堤頂部の長さ97m、幅3.64m、堤高25mというもの。それにしても本当に重厚なものです(凄)。今回の日本遺産WEEKの一般公開では、桜の時期の一般公開では公開されない堰堤上を歩くことができました。それが今回訪れたもっとも大きな理由です(^-^)。
そんないつもは歩くことができない堰堤上にある取水塔上屋の中がこちら。
手動式の開閉バルブです。写真では3つですが他に2つ、計5つあります。左の開閉バルブに「KNWW 大正五年」と書かれているのがわかります。KNWWは Kure(呉) Navy(海軍) Water Works(水道)の頭文字だそうです。ちなみにこの手動式開閉バルブ... 現役なのでしょうか... 現役なんですよねぇ?
続いて第一量天井を。上から見た写真と横から見た写真です。
正直なトコロ、これが国の重要文化財を構成する施設のひとつとは思っていなかったのです、そして、この「第一量天井」(爆)... いったい何をするものなのかも知らなかったのですが、取水塔と(下記する)丸井戸から水を集めて送り出す施設だそうです。
そしてこれが丸井戸。
本庄水源地は二河川を堰き止めて作ったものです。そのため、付替河川があり、それが二河川となっています。その二河川から取水した水を溜めて砂を沈殿させて第一水天井に送り出します。導水路の補修や清掃などで水源地から取水できないときなどにこの丸井戸からの水を使うために作られました。
上の丸井戸のために取水する設備がこちら。(ここから下は重要文化財を構成する施設ではありません。)
この写真だけではよくわかりませんが、この正面に二河川が流れており、ここから取水しているのかな...という感じです(笑)。
そしてこちらが二河川。この段差の一番上、橋がかかっているのがわかりますが、ちょうどそのあたりに上に記した取水口があります。
立派な段差です(笑)。
日本遺産WEEKとして、10月22、23日と29、30日と公開されたこの「本庄水源地」ですが、どれくらいの方が訪れたんだろう? それぞれの週で1度ずつ訪問したのですが、私たちのほかには二、三組のグループがいただけでした。スタッフの方にも「どこでこのイベントを知りましたか?」と質問されました。まだまだどうやって盛り上げようか手探り状態なのでしょうね。でも、こんな感じで通常入ることができない施設に入ることができるのは興味深い。今後も継続してくれることを期待です。
このページの公開日:2016.11.13
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